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2016年01月03日

「モコス、雑誌やめるってよ」

「え、ガチで?」

はい、と答えながら、ウルトラハウス担当S氏は俺のチャリの荷台にまたがった。
いや、それは俺の想像の話だ。S氏は俺の目の前にいて、俺はお店の中で立っている。
つまり俺は、S氏の話を聞いて、頭が真っ白になっていたのだ。
S氏は突然こう言ったのだ。

「モコス、雑誌やめるってよ」
断っておくが、S氏は非常識で無礼な方ではない。実際はもっと丁寧な口調と表現で俺に伝えたのだろう。
だが俺にはこんな風に聞こえてしまった。それくらいの衝撃があるニュースだ。

長く月刊誌として熊本の”いま”を伝え続けてきたタウン誌『MOCOS』が、現在発売中の2016年1月号を最後に月刊刊行を終了、今後はコンテンツごとに刊行される「ムック本」へ移行するという。

「モコス、雑誌やめるってよ」

mocosが月刊誌からムック本に変わります(公式サイトより)

『タンクマ(タウン情報クマモト)』『mocos』と2つの月刊誌は2016年2月より『タンクマ』1本に統合される。それはまるで、コンビニのファミリーマートがとサークルKサンクスが合併して、名が「ファミリーマート」となるようなものだ。ち、違うか・・・

本屋としては非常に残念なニュースであるが、これも時代の流れだろう。

タウン誌のような情報系の雑誌にとってのライバルは他誌ではなく、「FREE(無料)」である。
平成ヒトケタならいざ知らず、いまやスマホ一つ何でも調べられる。
映画や県内イベントの日程、うまいラーメン屋、ランチをやっている時間、流行ってるファッション。どんな情報でもググれば無料で手に入る。
多くの若者は「情報にお金を払うなんてバカらしい」と思っているのではないだろうか。
もう雑誌なんて世に不要なのかもしれない。

ではなぜいまだに雑誌を買う人がいるのか?
それは雑誌に掲載されるという「信用」にお金を払っているからである。

「情報の大洪水時代」というべき現在、いまを生きる俺たちに重要なのは、ウソの情報に惑わされずに信用に足る情報を吸収することである。
「見抜く力」をつけることである。

熊本に住む俺たちにとって『タンクマ』『mocos』という雑誌は「信用」という点ではピカイチだった。
だからずっと売れ続けていてたのだ。

正直、熊本で独立系のタウン誌を月に2誌も刊行するのは相当キツいことなんだと思う。
ここからは俺の想像だけど、
この先も2誌を刊行し続けるか、クオリティと「信用」を保ち続けるために1誌に絞るか、散々考えた末の
「モコス、雑誌やめるってよ」という決断だったのだろう。

この決断、書店員としては断固、「支持」である。

これからも熊本をアツくしたい同志として、『タンクマ』を応援するよ。
まず手始めに、1/27のリニューアルに併せて
大々的に『タンクマ』フェアでもやりますか。

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Posted by 金龍堂まるぶん店 at 15:55│Comments(0)出版界を思う
 
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