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2016年09月05日

熊本百景 三 『こち亀』のある景色

『こち亀』が終わる。

熊本百景 三 『こち亀』のある景色
こち亀週刊連載終了に寄せて 秋本治先生のコメント


まるぶんが休業して以後も出版業界では様々な動きがあったが、おそらくこれ以上の衝撃はないだろう。

連載40年。僕の書店員キャリアどころか、人生とほぼ同じ長さの週刊連載。
しかも40年間一度も休載がないという衣笠祥雄もびっくりの鉄人ぶり。
それをいわゆる”1話完結”タイプで続けてきたことは、巷で考えられているよりずっとずっと驚異的なのだと思う。
『ドラゴンボール』のセル編とか『ワンピース』の空島編を丸ごと毎週毎週描き上げている、と想像すると分かりやすい(ちょっと違うか...)。

主人公の両さんは、連載開始当初からずっと35歳。
「なんだこのメチャクチャな面白いオッさんは」と僕は小学校の頃から読んでいたが、気づくと僕は両さんよりも年上になっていた。
僕は両さんのような人生はもちろん歩めず、ごく普通に生きてきた。
しかし両さんと比べてしまうと、かなり何万分の1しか人生の楽しさを知らない。
それももったいない人生かもしれないな。

ちなみに僕が特に好きなエピソードは両さんの長崎旅行(35巻くらいだったかな)。
旅行中一文無しになってしまた両さんと本田(バイクの人)はとある老夫婦宅を訪ね、「親戚だ」と嘘をついて泊めてもらう。
疑うそぶりもなく快くもてなしてくれた夫婦に対し、良心の呵責に耐えられなくなった本田は翌朝、本当ことを伝える。
が、その夫婦はこう答えた…(結末はぜひご一読を)

正直言って最近は『こち亀』をあまり読んでいない。
まるぶんも震災前は185巻くらいからしか置いてなかった。
だから「こういう時だけ注目するな!」と両さんに怒られてしまうもの無理はない。

ただ『こち亀』があるという日常がそこにあったから、僕らは安心していた。
子どもの頃学校で怒られたりケンカしたりしたときも、家に帰ると決まって母はエプロンを着て夕ご飯を作っていた。
その日常の連続性に、人は安心するのである。
つまり『こち亀』はママのエプロンなのだ。
僕がジャンプを毎週買っていた頃から未だに連載が続いているのはもちろん『こち亀』だけ。
たまにジャンプの表紙に両さんが出ていると、子どもの頃を思い出してほっこりな気分になったものだ。
それがもうなくなってしまう。

悔いが残るのは、長年の恩返しに「ありがとう両さん!『こち亀』全巻フェア」をやりたくても、やる店がいまはないこと。
まるぶんが再開したら、何らかの形で感謝の気持ちを表したいと思う。


最後に一言だけ忠告を。
両さん、最終回までに結婚しろよ!僕はしたぞ。

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Posted by 金龍堂まるぶん店 at 18:04│Comments(0)熊本百景
 
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