2016年06月30日
熊本百景 二 国府の焼き土下座
書店員になって10数年、とにかくたくさん叱られた。
上司からの叱咤や非難を浴びまくる日々。
よく泣かなかったね。と当時の自分を褒めてあげたい。
もちろんお客様からもよく怒られた。
いや、クレームじゃないよ。
多くは明らかな僕のミスだったり、僕の手落ちだったり、僕の失敗だったりした。
30過ぎてから小学生の女の子に
「ちゃんとしてください!」と怒られたのは辛かった。
「土下座しろ!」も結構あった。
いまでは絶対タブーの土下座強要も、10年くらい前までは一種の手打ちとしての切り札的存在だった。
SNS以前には「とにかく頭を下げれば済む」そんな文化が存在したのだ。もちろんそれがが正しい文化だとは思わないが。
一度だけ言われたのが、
「焼き土下座しろ!」だ。
焼き土下座?
カ、カイジのアレですか?
(『賭博黙示録カイジ』参照)
もう土下座程度では冷ますことができないほどの怒りを覚えた目の前の紳士。顔は炎のように紅潮している。
土下座以上の謝意を示すモノとして紳士の脳裏にとっさに浮かんだ「焼き土下座」。おそらく紳士は興奮のあまり、思わずそれを口に出してしまったのだろう。
しかしアツアツの鉄板に10秒以上頭を擦り付けられる自信が僕にあろうはずもなく、
「それだけはご勘弁を…」と深々と頭を下げて懇願した。
すると紳士は「君の誠意はわかった」と言い残し、足早に店から去っていった。
紳士はなぜ急に立ち去っただろう。
言い過ぎたと思い、ばつが悪くなったのか。
それとも「本当にすまないという気持ちで胸がいっぱいなら、どこであれ土下座ができる」というポリシーを本当に持っていたのか。
いまとなってはもうわからない。
その時紳士が何に怒っていたのか、それももうわからない。
そして当時国府にあったその書店は、いまはもうない。
上司からの叱咤や非難を浴びまくる日々。
よく泣かなかったね。と当時の自分を褒めてあげたい。
もちろんお客様からもよく怒られた。
いや、クレームじゃないよ。
多くは明らかな僕のミスだったり、僕の手落ちだったり、僕の失敗だったりした。
30過ぎてから小学生の女の子に
「ちゃんとしてください!」と怒られたのは辛かった。
「土下座しろ!」も結構あった。
いまでは絶対タブーの土下座強要も、10年くらい前までは一種の手打ちとしての切り札的存在だった。
SNS以前には「とにかく頭を下げれば済む」そんな文化が存在したのだ。もちろんそれがが正しい文化だとは思わないが。
一度だけ言われたのが、
「焼き土下座しろ!」だ。
焼き土下座?
カ、カイジのアレですか?
(『賭博黙示録カイジ』参照)
もう土下座程度では冷ますことができないほどの怒りを覚えた目の前の紳士。顔は炎のように紅潮している。
土下座以上の謝意を示すモノとして紳士の脳裏にとっさに浮かんだ「焼き土下座」。おそらく紳士は興奮のあまり、思わずそれを口に出してしまったのだろう。
しかしアツアツの鉄板に10秒以上頭を擦り付けられる自信が僕にあろうはずもなく、
「それだけはご勘弁を…」と深々と頭を下げて懇願した。
すると紳士は「君の誠意はわかった」と言い残し、足早に店から去っていった。
紳士はなぜ急に立ち去っただろう。
言い過ぎたと思い、ばつが悪くなったのか。
それとも「本当にすまないという気持ちで胸がいっぱいなら、どこであれ土下座ができる」というポリシーを本当に持っていたのか。
いまとなってはもうわからない。
その時紳士が何に怒っていたのか、それももうわからない。
そして当時国府にあったその書店は、いまはもうない。
2016年06月29日
近況 ー2016年6月29日ー
熊本地震:カッパ像の書店、営業再開へ 熊本
6/28の毎日新聞さんに近況記事が掲載されました。
記事の通り、まるぶんは現在10月営業再開を目指して動いています。
震災から約2か月半が経過したいまも営業ができない。
建物やらなんやらに様々な不具合が露見し、復旧がなかなか進まない。
そんな現実の前に僕は毎日やるせなく、情けない思いを抱いています。
しかし中途半端の状況で営業再開してお客様に迷惑をかけることがあってはならない。
ましてお客様の危険を及ぼすようなことになったら…と思い、
ギュッと拳を握りしめて気持ちを抑える日々です。
10月再開と決まったわけではありません。
まだまだ詳細は未定で、もろもろの進行具合によっては遅れる可能性もあります。
ただ、このニュースを出せたことで、再開という目標がグッと近く見え、
目の前がみるみる明るくなりました。
あえて言います。
「本」などという、食べられもせず、生活必需品でもないものを売っている
本屋の再開を望まれる声がこれほど大きいとは。
本当に驚いています。
そして嬉しく思ってます!
本は生活必需品ではないのだろうけど、
生きるためになくてはならない「生きる必需品」なんだな、と思い知らされた次第です。
皆様の声、しっかり届いていますよ。
ありがとうございます。
それではこの秋、お会いしましょう。
6/28の毎日新聞さんに近況記事が掲載されました。
記事の通り、まるぶんは現在10月営業再開を目指して動いています。
震災から約2か月半が経過したいまも営業ができない。
建物やらなんやらに様々な不具合が露見し、復旧がなかなか進まない。
そんな現実の前に僕は毎日やるせなく、情けない思いを抱いています。
しかし中途半端の状況で営業再開してお客様に迷惑をかけることがあってはならない。
ましてお客様の危険を及ぼすようなことになったら…と思い、
ギュッと拳を握りしめて気持ちを抑える日々です。
10月再開と決まったわけではありません。
まだまだ詳細は未定で、もろもろの進行具合によっては遅れる可能性もあります。
ただ、このニュースを出せたことで、再開という目標がグッと近く見え、
目の前がみるみる明るくなりました。
あえて言います。
「本」などという、食べられもせず、生活必需品でもないものを売っている
本屋の再開を望まれる声がこれほど大きいとは。
本当に驚いています。
そして嬉しく思ってます!
本は生活必需品ではないのだろうけど、
生きるためになくてはならない「生きる必需品」なんだな、と思い知らされた次第です。
皆様の声、しっかり届いていますよ。
ありがとうございます。
それではこの秋、お会いしましょう。
2016年06月24日
熊本百景 一 本荘マンションの雨
熊本百景 -本と僕と熊本の100コ-
本荘のマンションに10年住んでいた。築30ウン年、6畳一間のユニットバス。
大学病院が目の前にあるので、年中、昼夜を問わず救急車のサイレンに驚かされた。
ベランダに寄りつく鳩にも悩まされた。昼夜を問わず糞をされた。
ペットボトルを見ると去っていくだとか、CDの円盤が苦手だとか、何だとか。
掴んだ鳩撃退情報はなんでも試したが、その度に奴らは逞しくなって帰ってきた。
雨漏りにも悩まされた。
いや、アノ部屋の場合、”雨染み上がり”というべきか。
長雨が降ると、畳が水に染まっていくのだ。
ある夜中、なんだか背中や尻が冷たくて目が覚めた。
まさか、オネショ・・・?と一瞬疑ったが、ぐちょぐちょになった敷布団を見て「そんなに水飲んでないし」と我に返った。
いや、外から聞こえる豪雨の音に「コリャ雨漏りだ」と我に返った。
起きると、6畳の部屋半分が水浸しになっていた。家具や衣類、いろんなものが濡れた。
一番困ったのは、その夜読みながら寝てしまい、枕元に置いていた村上春樹の『ノルウェーの森』下巻である。
文庫本は水をたっぷり含み、3倍くらいの厚さになっていた。濡れた紙はピッタリ貼りつき、全く開かない。
もう読めないじゃないか。どこまで読んだのかもわからない。
「『グレート・ギャツビィ』を3回読む男なら俺と友だちになれる」は『ノルウェーの森』での永沢さんの名言だ。
僕はそれにあやかり3度目の『ノル森』に挑んだのだが、あえなく断念。
しかし、僕は『ノル森』を3回も読んで、いったい誰と友だちになりたかったのか。読んでるうちに忘れてしまった。
ベランダでくつろぐ鳩たちでないことだけは確かだ。
大雨が続く熊本の梅雨。
あの本荘のマンションは、今日も雨が染み上がっているのだろうか。
本荘のマンションに10年住んでいた。築30ウン年、6畳一間のユニットバス。
大学病院が目の前にあるので、年中、昼夜を問わず救急車のサイレンに驚かされた。
ベランダに寄りつく鳩にも悩まされた。昼夜を問わず糞をされた。
ペットボトルを見ると去っていくだとか、CDの円盤が苦手だとか、何だとか。
掴んだ鳩撃退情報はなんでも試したが、その度に奴らは逞しくなって帰ってきた。
雨漏りにも悩まされた。
いや、アノ部屋の場合、”雨染み上がり”というべきか。
長雨が降ると、畳が水に染まっていくのだ。
ある夜中、なんだか背中や尻が冷たくて目が覚めた。
まさか、オネショ・・・?と一瞬疑ったが、ぐちょぐちょになった敷布団を見て「そんなに水飲んでないし」と我に返った。
いや、外から聞こえる豪雨の音に「コリャ雨漏りだ」と我に返った。
起きると、6畳の部屋半分が水浸しになっていた。家具や衣類、いろんなものが濡れた。
一番困ったのは、その夜読みながら寝てしまい、枕元に置いていた村上春樹の『ノルウェーの森』下巻である。
文庫本は水をたっぷり含み、3倍くらいの厚さになっていた。濡れた紙はピッタリ貼りつき、全く開かない。
もう読めないじゃないか。どこまで読んだのかもわからない。
「『グレート・ギャツビィ』を3回読む男なら俺と友だちになれる」は『ノルウェーの森』での永沢さんの名言だ。
僕はそれにあやかり3度目の『ノル森』に挑んだのだが、あえなく断念。
しかし、僕は『ノル森』を3回も読んで、いったい誰と友だちになりたかったのか。読んでるうちに忘れてしまった。
ベランダでくつろぐ鳩たちでないことだけは確かだ。
大雨が続く熊本の梅雨。
あの本荘のマンションは、今日も雨が染み上がっているのだろうか。