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2015年07月30日

「火花」フィーバーの向こう岸。

ずいぶん昔の話だが、
ダウンタウンの番組で、こういう企画をやっていた。

喫茶店で「アイスコーヒー」を注文する際、ちょっとずつ言い方を変えて注文し、
どの程度まで店員さんは「アイスコーヒー」と認識してしまうのか、という実験。

「アイスモーヒー」
「ナイスコーチ」
など、意識せずに聴けば「アイスコーヒー」って思うだろうな、っていうのから、
「愛想笑い」
「アイアンヒーロー」
といった、どう考えてもそうは聞こえない言葉で注文したときに、店員さんが決まって表情を強張らせるのが面白かった。
時に思わぬ奇跡の聞き違いが発生し、笑いの神様が舞い降りる。
「熱いコーヒー」と言ったときに、ホットコーヒーが出てきたのにはマジ笑ったな。

なんか、昨今のバラエティには余り見られない「ガチ」な感じが、ダウンタウン等出演者同様、TVを観ている我々にもある種の緊張感を誘っていたのだろう。
ただただ、食い入るように画面に見入っていた。
嗚呼、古き良き平成ヒトケタのTVショウ。

さて、『火花』である。

「火花」フィーバーの向こう岸。


「お笑い芸人初の芥川賞受賞」はマスコミに大きく取り上げられ、出版界久々の大フィーバー。
以来、来る日も来る日も「火花」を求めてお客様が訪れる。
又吉の芥川賞受賞の片隅で、「火花は入荷未定です」がマイ流行語大賞受賞間違いなし。

普段、本を読まれないような若者やオバサマ達も巻き込んだこのムーブメントは、「ハンカチ王子」や「ハニカミ王子」フィーバーを彷彿とさせる。
とにかく「あれだけテレビで話題にしてるんだからボクもワタシも踊ってみようかな」そんな衝動に引っ張れる、軽さが売りのブーム。

「コレが読書人口増加の契機になれば」という期待と「こんなん一時的に決まってるやん」という空虚感。
そりゃモチロン後者なんだろうけど、まあいいじゃん。
出版不況なんだから、ひとまず本屋も一緒に踊ろうよ。

とにかく今回の件、お客様の記憶の曖昧さが目立つ。
「『花火』ありますか?」←ぎ、逆になってますけど…
「『ピース』ありますか?」←そ、それコンビ名ですけど…
「綾部さんの本ありますか?」←そ、それは熟女マニアの方ですけど(綾部はさっぱり売れない写真集出してますが、それでいいですか?)…
「直木賞の本いつ入る?」←直木賞なら今あります!で、でもそっちじゃないですよね、お求めの本は…
「TVのあれ!←情報少なすぎですが、分かりますとも!

正直言って普通に『火花』と訪ねられることは少なく、間違いのオンパレードなのだが、
我々書店員はそれが『火花』のお尋ねだとすぐ分かるのだ。

つまり『火花』とは「アイスコーヒー」なのである。
たとえ言い方を変えようとも、店員には通じてしまう「ガチで欲しい感」が、そのブームの軽さを越えて、お客様の心にあるのだろう。

嗚呼、又吉さん、ありがとう。
長年ぬるま湯に浸かっていた出版業界に「ガチ」を持ち込んでくれて。

ココから先はボクらの仕事さ。
あなたがもたらしたその「ガチ」をどれだけ大きく出来るか、
色々試みてみるよ。


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Posted by 金龍堂まるぶん店 at 01:00│Comments(0)受賞作
 
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