『漫勉』を観よ!

金龍堂まるぶん店

2015年09月30日 01:06

NHKの短期連載番組「浦沢直樹の漫勉」が面白い。



日本を代表する漫画家・浦沢直樹をナビゲーターに、東村アキコ、藤田和日郎、浅野いにお、さいとう・たかをという当代きっての人気漫画家の制作現場をのぞくドキュメンター番組である。

いやぁ、スゴい番組だ。
何がスゴいって、その細かさだ。
浦沢直樹と浅野いにおのペンの持ち方の違いとか、目を何度も書き直すシーンとか、深夜番組とはいえ細かすぎる。
誰が好き好んで観るんだろ、って僕だ。

浦沢直樹と漫画家の1対1のトークもいい。
描き方やこだわりの相違点など、普段読者の目に触れない部分についてどこまでも深く話してくれるので、ひと言たりとも聞き逃せない。

白眉だったのは、浦沢が藤田和日郎に言ったひとこと。
「テンション上げてクールなものを描いているんですよ。作品のできあがりと作者は違いますから。ものすごいテンション上がっている。クールじゃ作品なんて描けないですよ。」
ただカリカリ描いてるわけじゃないんだな。

本屋とはふしぎな商売で、自分が売っているモノについて大して知らなくても成立つ数少ない商売である。
想像してごらん。
仕入れた野菜について産地や生産者を答えられない八百屋から買いたいと思う?
展示してある電子レンジについて聞いても全く答えられない電気屋で買いたいと思う?
「風邪薬ください」といって痔の薬を渡す薬屋で買いたいと思う?

本屋はなぜか、店員が読んでなくても許されるんだよな、なぜか。
「種類が多すぎる」とか「読む時間がない」とか言い訳するけど(僕も)、それってどんな業種でも一緒でしょ。
完璧になれなくても、まずはそれに近づく努力をするのがプロってもんだ。自戒を込めて言うけど。
モノを知らない店員がお客様を知ることなんてできない。

自分の飯の種になるモノが誕生する瞬間を見る。
こんな素晴らしい機会はそうそうないと思うから最後に言っとく。
『漫勉』書店員なら必見でしょ。

もちろん漫画を愛する読者の皆様にもおススメの番組である。


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